


交通事故によって、激しい疼痛を伴う傷害を負うことがあります。RSD、CRPSと呼ばれているものがこれにあたります。RSDとは反射性交感神経萎縮症のことをいい、CRPSは複雑性局部疼痛症候群のことをいいます。RSDが後遺症として認められるためには、①関節拘縮②骨の萎縮③皮膚の変化(皮膚温の変化、皮膚の萎縮)という3つの症状が存在することが必要です。RSDは交感神経の異常亢進が原因とされてきましたが、それだけが原因となっているものではないため、CRPSという診断名が使われることもあります。
疼痛に関する裁判例は以下のようなものがあります。
道路を横断しようとしていた原告運転の自転車と、対面赤信号を無視して進行してきた被告運転の普通車が衝突した事故につき、原告が損害賠償を求めたところ、被告が本件事故による受傷内容、後遺障害の有無につき争った事案において、原告は低髄液圧症候群の診断を受けているものの、MRIでは明らかな小脳下垂や髄液漏出は認め難いとされ、ブラッドパッチの効果のほども曖昧であるとされているなどとして、同診断を採用せず、また、RSD等についても、その診断基準である痛覚異常・過敏、灼熱痛、浮腫、皮膚変化等について原告は立証できていないから、RSD等とは認められないが、原告の右拇指疼痛は事故後に生じたと認められるとして、これを受傷内容とした上、原告は本件事故により右手、膝を打ったとして、左膝の痛みにつき障害等級14級、右拇指につき同12級の神経症状として併合12級の後遺障害を認め、請求を一部認容とした事例
(名古屋地裁平成21年12月16日)
原告車両(足踏み式自転車)を運転して本件交差点を青色信号に従い北方から南方に向けて横断していた原告(女姓・事故当時25歳・派遣会社スタッフ)が、同交差点を南方から西方に向かって左折してきた被告車両(タクシー車両・普通乗用自動車)に衝突されたことから、被告車両の運行供用者である被告に対し、損害賠償を求めた事案において、反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)の認定には、RSDの四主徴(疼痛、腫脹、間接拘縮、皮膚変化)を含んだ自賠責保険上のRSD認定の三要件(間接拘縮、骨萎縮、皮膚変化)の充足が必要であるところ、原告には間接拘留以外は認められないから、左足も右膝もRSDに罹患しているとはいえないとしたが、事故後一貫して痛みを訴えていた左下肢については、後遺障害14級相当(局部に神経症状を残すもの)と認定する一方、事故の1年9か月後に発症した右膝痛については、本件事故と相当因果関係に疑問が残るとして後遺障害と認定しなかった事例
(大阪地裁平成21年 4月 9日)
原告が運転する原動機付自転車と被告会社が保有し被告Y1が運転するタクシーが衝突した交通事故につき、原告が被告らに対して損害賠償を求めた事案において、被告Y1は、Uターンするに際し被告車の後方を時速約30キロメートルで走行していた原告車が自車の右側から追い越そうとすることを全く予測しないまま右に転把して被告車を進行させたために、追い越し中の原告車の左後部に被告車の右前部角を衝突させ事故を惹起した過失があるが、他方原告にも、前方を進行する被告車の動静に十分注意して追い越しを行うべきであった過失が認められ、過失割合は原告が1割、被告Y1が9割とされた上、原告に残存するRSDによる後遺障害を10級と評価して賠償額が定められた事例
(東京地裁平成20年 3月18日)
原告が、原告の運転する自動車と被告の運転する自動車が交差点で出合い頭に衝突して生じた事故により損害を被ったとして、被告に対し、民法709条に基づき、損害賠償を求めた事案において、被告車側に一時停止規制がありながら、被告は一時停止せず、かつ、減速せずに本件交差点に進入したこと、他方、原告は減速して本件交差点に進入したこと等に鑑みて、原告の過失1割、被告の過失9割として過失相殺を認めた上で、被害者の反射性交感神経性ジストロフィーについて、既往の疾病と交通外傷の長期治療が競合したものであるとして事故との相当因果関係を認め、後遺障害による損害について5割、その他の損害について3割の素因減額を認めた事例
(名古屋地裁平成18年 9月29日)
交通事故により頭部打撲、頭頸部挫傷の傷害を負った被害者に発生した左上下肢の麻痺等の症状を、反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)による神経系統の機能又は精神の障害と認めたうえで、本件事故による外傷及びその治療行為以外に被害者にRSDが発症する事情はうかがえないとして、被害者の左下肢に発症したRSDは、本件事故による外傷を契機として発症したものとされた事例
(名古屋地裁平成16年 7月28日)
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